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1次関係、1次従属、1次独立についての主張(定義).

1次関係

1次関係

 ベクトルa1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mc1a1+c2a2++cmam=0 (ciR)c_1\boldsymbol{a}_1 + c_2\boldsymbol{a}_2 + \cdots + c_m\boldsymbol{a}_m = \boldsymbol{0} \space ( c_i \in \reals)を満たすとき,これをベクトルa1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_m1次関係という.

 すべてのcic_iが0のとき, 0a1+0a2++0am=00\boldsymbol{a}_1 + 0\boldsymbol{a}_2 + \cdots + 0\boldsymbol{a}_m = \boldsymbol{0} はどんなベクトルa1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mについても成り立つ.これを自明な1次関係という.

1次関係の主張

 ベクトルの組a1,,am\boldsymbol{a}_1, \cdots, \boldsymbol{a}_m1次結合=0\text{1次結合}=\boldsymbol{0}となる関係式のことを1次関係という.関係式さえ満たされれば,係数ciR (i=1,,m)c_i \in \reals \space ( i = 1, \cdots , m)については気にしない.c1=c2==cm=0c_1=c_2=\cdots=c_m=0のとき,どんなベクトルの組でも関係式は必ず満たされるので,関係式は存在するのかを考える必要はない.

 ベクトルの組を行列A=(a1am)A=(\boldsymbol{a}_1 \cdots \boldsymbol{a}_m)とみれば,Ac=0\boldsymbol{Ac}=\boldsymbol{0}が関係式である.(c=(c1cm)\boldsymbol{c}=\begin{pmatrix} c_1 \\ \vdots \\ c_m \end{pmatrix}である.)また,Ac=0\boldsymbol{Ac}=\boldsymbol{0}を満たすc\boldsymbol{c}の集合をXXとすれば,Kerf=X\text{Ker}f=Xである.(ffってなんだよというのは置いておいて.)

1次独立について

1次独立

 ベクトルの組a1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mについて,1次関係 c1a1+c2a2++cmam=0c_1\boldsymbol{a}_1 + c_2\boldsymbol{a}_2 + \cdots + c_m\boldsymbol{a}_m = \boldsymbol{0}が成り立つのは,自明な1次関係すなわち,c1=c2==cm=0c_1 = c_2 = \cdots = c_m = 0の場合のみであるとき,a1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mは1次独立であるという.

1次独立の主張

 ベクトル空間内の元(ベクトル)を何個か適当に取ってきて,それらを1組と考えた場合,この組の中だけで各元の関係性を調べると,それぞれが独立していると主張している.(独立とは,ある元がその他の元の1次結合で表現できないときをいう.)これを数学的に表現すると,1次関係が自明なもののみ成り立つときが1次独立である.

 ベクトルの組のそれぞれのベクトルについて、これらがどのような関係性なのかを主張しているのであって,別のベクトルの組は同じ関係性であるかどうかはわからない(1次従属かもしれない)。

 誤って理解してはいけないことは,1組の1次独立のベクトルの数=次元数,1次独立=基底ではない.3次元ベクトル空間のある2つのベクトルの組が1次独立であっても,組のベクトル数は次元数とは異なるし,基底になっていない.

 1次関係で出てきた集合XXで言えば,ベクトルの組が1次独立であることはX={0}X=\{\boldsymbol{0}\}である.これが”1次関係が成り立つのは自明な1次関係の場合のみであるとき”の意味である.

1次従属について

 ベクトルの組a1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mが1次独立でないとき,1次従属であるという.すなわちa1,a2,,am\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \cdots , \boldsymbol{a}_mが1次従属であるとは,1次関係 c1a1+c2a++cmam=0 c_1\boldsymbol{a}_1 + c_2\boldsymbol{a} + \cdots + c_m\boldsymbol{a}_m = \boldsymbol{0}を満たすc1,c2,,cmc_1, c_2, \cdots , c_mで,そのうちの少なくとも1つが0でないものが存在するときにいう.

1次従属の主張

 ベクトル空間内の元(ベクトル)を何個か適当に取ってきてそれらを1組と考えた場合,この組が1次独立でないとき1次従属であると主張している.別の言い方をすれば,この組の中だけで各元の関係性を調べると,ある元はその他の元の1次結合で表現できてしまうとき,この組は1次従属であるという.

 これも1次独立と同じく,ベクトルの組がどのような関係性なのか(1次独立なのか?1次従属なのか?)を主張している.

 1次関係で出てきた集合XXで言えば,ベクトルの組が1次従属であることはX{0}X \neq \{\boldsymbol{0}\}である.すなわち,集合XXにはゼロベクトル(0\boldsymbol{0})以外に元が存在するということ.

もう少し深堀り

 1次関係はKerf\text{Ker}fのことで,自明な1次関係を必ず満たし,非自明な1次関係とともに構成される.すなわち,Kerf\text{Ker}fは1次独立と関係するゼロベクトルを必ず含み,1次従属と関係するゼロベクトル以外のベクトルc\boldsymbol{c}で構成される集合であるとみえる.

1次関係、1次従属、1次独立の関係
1次関係、1次従属、1次独立の関係

 1次関係は関係式のことで,1次独立と1次従属はベクトルの組の各ベクトルの関係性についての主張であり,両者を区別しないと混乱する.


復習ノート

以下の質問に答えよ.

  • 1次関係とは何か.
  • 1次独立とは何か.
  • 1次従属とは何か.
  • 1次関係と1次独立・1次従属はどういう関係か.