定理7.3.2
線形写像f:V→Wが単射であるための必要十分条件は
Kerf={0}.
定理の主張
線形写像fの単射性を知りたいならば,Kerfの元を調べよ.Kerfの元(ベクトル)が0(ゼロベクトル)のみであれば,fは単射である.
線形写像fにより,0∈Wに対応するVの元が0(ゼロベクトル)のみなら,fは単射であるということ.
線形写像の単射性とベクトル空間の対応関係
証明の考え方
-
fは単射⟹Kerf={0} を示す.
fは単射であると仮定する.このとき,Kerf⊂{0} かつ {0}⊂Kerfであることを示せばよい.
{0}⊂Kerfを示す.
これは明らか.
Kerf⊂{0}を示す.
x∈Kerf⟹x∈{0}であることを示す.
x∈Kerfとする.このとき,Kerfの定義よりf(x)=0が成り立つ.仮定よりfは単射なので,f(x)=0を満たすxは1つで0である.よって,x∈{0}.したがって,Kerf⊂{0}.
以上から,Kerf={0}.
-
Kerf={0}⟹fは単射を示す.
単射の定義より,f(x)=f(y)⟹x=y を示せばよい.
f(x)=f(y)とする.線形性より式を変形してf(x−y)=0.Kerf={0}より,x−y=0.よって,x=y.したがって,fは単射である.
復習ノート
- 次元定理とどのように関連しているだろうか.
- 次元定理とは何だっただろうか.
- Kerfの定義は何か.
- fが単射ではない場合はV,Wの対応関係をどのように図示できるだろうか.