定理12.10.1
n次実正方行列Aが,重複もこめてn個の固有値をもつならば,適当な正則行列Pによって
P−1APはジョルダンの標準形になる.
定理の主張
固有値の数がベクトル空間の次元と同じなら、ベクトル空間は一般固有空間で分解できる.
一般固有空間の分解
そして,各一般固有空間はジョルダン・ダイヤグラムを構成する基底で考えると,その表現行列はジョルダン・ブロックで表される.
適当な正則行列Pは何かといえば,直和分解した一般固有空間の各ジョルダン・ダイアグラムを順番に並べたものである.
証明の考え方
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一般固有空間による直和分解
線形変換f:Rn→Rnとし,線形変換fの表現行列をAとする.定理12.6.1により,Rnは一般固有空間に直和分解される.つまり,
Rn=W(λ1)⊕⋯⊕W(λr).
すると定理12.1.1より,ある正則行列Pがあって,
P−1AP=A10⋱0Ar
となる.各Aiがジョルダン・ブロックで表されればよい.
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べき零写像の表現行列を考える.
fi−λiid : W(λi)→W(λi)を考える(idは恒等写像,f_iの表現行列はAi).fi−λiidはW(λi)でべき零写像である.記述の簡略のため,gi=fi−λiidとおく.
このべき零写像giのフィルトレーションに関係してW(λi)の基底をうまく選ぶ.つまり,ジョルダン・ダイヤグラムである.そして,この基底に関してgiの表現行列を考える.ここにジョルダン・ブロックが現れるからである.
表現行列
表現行列は基底の像と基底との関係であるから,その関係を一部記載すると,
gi(gik−1(x1)⋯gi(x1) x1)=(gik−1(x1)⋯gi(x1) x1)J(0,k1)
となる.つまり,gi表現行列の一部はJ(0,k1)である.
表現行列の全体は以下のようになる.
(gi=fi−λiid=)Ai−λiE=J(0,k1)0⋱0J(0,kp)
これをAiについて解くと,
Ai=J(λi,k1)0⋱0J(λi,kp)
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ジョルダン標準形
各Aiを(1)に代入すると,P−1APはジョルダン標準形となる.
復習ノート
ジョルダン標準形の証明には以下を理解している必要がある.
- 一般固有空間による直和分解.
- べき零写像のジョルダン・ダイヤグラムによる表現行列.