問72
, で,は数を定義する縮小区間の集合であることを証明せよ.
本問題は数列 が自然対数の底 を含む縮小区間の集合であることを証明したいので,縮小区間の定義を確認すれば,おのずと何をすればよいか明らかになります.
縮小区間
それぞれの区間がその前の区間に含まれ,そして,であるような区間を縮小区間という.
これだけでは何を示せばよいか見えづらいので,具体的に表現します.すなわち,以下の条件を満たすことを示せばよいです.
- 各 に対して、 である.
- 数列 は単調増加である().
- 数列 は単調減少である().
- 区間の長さが に収束する().
数についてはの極限の話になります.区間の長さがに収束することから,の極限を計算すればよいと見通しが立ちます.
したがって,大きな方針として縮小区間を示し,その後に数であることを示します.
(式変形も記述したので,解答が少し長くなっています.)
が縮小区間の集合であることを示し,その後数を定義するものであることを示す.
-
各 に対して、 である .
各に対し,であることを示せばよい.でだから,である.
極限でもない限り,等号は成立しない.
-
数列 は単調増加である.
数列 が単調増加である、すなわち であることを示します。
これには,一般化された相加相乗平均の不等式を利用します。
一般化された相加相乗平均の不等式
個の非負の実数 が与えられたとき、それらの相加平均 (Arithmetic Mean, AM) は相乗平均 (Geometric Mean, GM) 以上である。
すなわち、
等号が成立するのは、 のときに限る。
個の正の数について考えます。これらの相加平均は
相乗平均は
相加相乗平均の不等式により,である,すなわち
ここで,なのでであるため,等号は成立しない.両辺乗すれば,
となり,数列が単調増加であることが示せました.
-
数列 は単調減少である.
数列 が単調減少である、すなわち であることを示したい.だが,これを直接示すのは複雑なので,代わりに を証明します.このとき,二項定理を使った不等式 を使います.
ここで、式の中の の部分に注目します。
なので,これを元の式に代入すると
二項定理を使った不等式でこれを評価する.
だから,
分子:
分母: .
よって分子>分母だから,
したがって, が示され,数列 は単調減少であることが証明されました。
-
区間の長さが に収束する.
である.したがって,.区間の長さが に収束しました.
-
数 を定義する縮小区間の集合であること.
縮小区間に対してただ1つの実数が対応し,その実数は なので,結論を示すことができました.