コンテンツにスキップ

三元数を構成する.

 高校数学の複素数を勉強しているとき,複素数って2つの実数の組と捉えれば可視だよねと気づき,その発展形として3つの実数の組はどうなるのか考え始めた.これがきっかけで このページの三元数は誕生した.

 しかし鵜呑みにしてはいけない.一般的に三元数は存在しない.

 この三元数ページは自分が考えた結果を残すべく誕生したものである.

四元数,八元数との違いについて

Section titled “四元数,八元数との違いについて”

 四元数,八元数はある.それらとこの三元数はどう違うのかを表で示す.

加法減法乗法交換法則結合法則分配法則
加法乗法加法乗法
四元数
八元数
三元数

四元数,八元数と三元数の違い.

 三元数の元を3つの実数の組(𝑎,𝑏,𝑐)とする.(𝑎,𝑏,𝑐)も同様.

加法  要素毎に足し算する.

(𝑎,𝑏,𝑐)+(𝑎,𝑏,𝑐)=(𝑎+𝑎,𝑏+𝑏,𝑐+𝑐)

減法  要素毎に引き算する.

(𝑎,𝑏,𝑐)(𝑎,𝑏,𝑐)=(𝑎𝑎,𝑏𝑏,𝑐𝑐)

乗法

(𝑎,𝑏,𝑐)(𝑎,𝑏,𝑐)=(𝑎𝑎𝑏𝑏𝑐𝑐,𝑎𝑏+𝑏𝑎+𝑐𝑏,𝑎𝑐+𝑏𝑐+𝑐𝑎)

スカラー倍  𝑘とする.

𝑘(𝑎,𝑏,𝑐)=(𝑘𝑎,𝑘𝑏,𝑘𝑐)

 以上までの加法・減法・乗法・スカラー倍から数を構成する.

三元数

 1=(1,0,0)𝑖=(0,1,0)𝑗=(0,0,1)とおくと,

(𝑎,𝑏,𝑐)=(𝑎,0,0)+(0,𝑏,0)+(0,0,𝑐)=𝑎(1,0,0)+𝑏(0,1,0)+𝑐(0,0,1)=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗

加法

(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)+(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)=(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗

減法

(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)=(𝑎𝑎)+(𝑏𝑏)𝑖+(𝑐𝑐)𝑗

乗法

 𝑖2=𝑗2=1𝑖𝑗=𝑗𝑗𝑖=𝑖𝑎𝑖=𝑖𝑎𝑎𝑗=𝑗𝑎𝑎により定義する.

(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)=(𝑎𝑎𝑏𝑏𝑐𝑐)+(𝑎𝑏+𝑏𝑎+𝑐𝑏)𝑖+(𝑎𝑐+𝑏𝑐+𝑐𝑎)𝑗

 𝑥=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗𝑦=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗とする.

加法

𝑥+𝑦=(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗=(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗=𝑦+𝑥

乗法

 𝑐=1+𝑖𝑑=1+𝑗とすると,

𝑐𝑑=(1+𝑖)(1+𝑗)=1+𝑗+𝑖+𝑖𝑗=1+𝑖+2𝑗𝑑𝑐=(1+𝑗)(1+𝑖)=1+𝑖+𝑗+𝑗𝑖=1+2𝑖+𝑗

よって,𝑐𝑑𝑑𝑐.交換法則の乗法は成り立たない.

加法

 𝑥=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗𝑦=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗𝑧=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗とおくと,

(𝑥+𝑦)+𝑧=(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗+𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗=(𝑎+𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐+𝑐)𝑗=𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗+(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗=𝑥+(𝑦+𝑧)

乗法

 𝑥=1+𝑖𝑦=1+𝑗𝑧=𝑖+𝑗とおくと,

(𝑥𝑦)𝑧=(1+𝑖+2𝑗)(𝑖+𝑗)=3+3𝑖+2𝑗𝑥(𝑦𝑧)=(1+𝑖)(1+2𝑖+𝑗)=3+𝑖+2𝑗

よって,(𝑥𝑦)𝑧𝑥(𝑦𝑧).したがって,結合法則の乗法は成り立たない.

左分配法則  𝑥(𝑦+𝑧)𝑥𝑦+𝑥𝑧

 𝑥=1+𝑖𝑦=1+𝑗𝑧=𝑖+𝑗とおくと,

𝑥(𝑦+𝑧)=(1+𝑖)(1+𝑖+2𝑗)=2𝑖+2𝑗𝑥𝑦+𝑦𝑧=1+𝑖+2𝑗1+2𝑖+𝑗=3𝑖+3𝑗

 よって,𝑥(𝑦+𝑧)𝑥𝑦+𝑦𝑧.したがって,分配法則は成り立たない.

右分配法則  (𝑥+𝑦)𝑧=𝑥𝑧+𝑦𝑧

 この三元数は右分配法則が成り立つように作った.

𝑥𝑧=(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)=(𝑎𝑎𝑏𝑏𝑐𝑐)+(𝑎𝑏+𝑏𝑎+𝑐𝑏)𝑖+(𝑎𝑐+𝑏𝑐+𝑐𝑎)𝑗𝑦𝑧=(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)=(𝑎𝑎𝑏𝑏𝑐𝑐)+(𝑎𝑏+𝑏𝑎+𝑐𝑏)𝑖+(𝑎𝑐+𝑏𝑐+𝑐𝑎)𝑗𝑥𝑧+𝑦𝑧={(𝑎+𝑎)𝑎(𝑏+𝑏)𝑏(𝑐+𝑐)𝑐}+{(𝑎+𝑎)𝑏+(𝑏+𝑏)𝑎+(𝑐+𝑐)𝑏}𝑖+{(𝑎+𝑎)𝑐+(𝑏+𝑏)𝑐+(𝑐+𝑐)𝑎}𝑗(𝑥+𝑦)𝑧={(𝑎+𝑎)+(𝑏+𝑏)𝑖+(𝑐+𝑐)𝑗}(𝑎+𝑏𝑖+𝑐𝑗)={(𝑎+𝑎)𝑎(𝑏+𝑏)𝑏(𝑐+𝑐)𝑐}+{(𝑎+𝑎)𝑏+(𝑏+𝑏)𝑎+(𝑐+𝑐)𝑏}𝑖+{(𝑎+𝑎)𝑐+(𝑏+𝑏)𝑐+(𝑐+𝑐)𝑎}𝑗

よって,(𝑥+𝑦)𝑧=𝑥𝑧+𝑦𝑧.したがって,右分配法則は成立する.

 iを掛けるとxy平面を𝜋2回転する,jを掛けるとxz平面を𝜋2回転する. つまり,三次元のxyz平面で言えば,三元数𝑥に対し𝑖𝑥𝑥をxy平面を𝜋2回転させた点に移動する. 𝑗𝑥はxz平面を𝜋2回転させた点に移動する.

最終更新日: