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循環しない無限小数は無理数を表わす.(P14)

定理(無理数)

 循環しない無限小数は無理数を表わす。

 循環する無限小数は有理数だが,循環しない無限小数は実数であり,そのすべてが無理数である

 証明の方針として,まず循環しない無限小数が実数であることを示す. 実数でなければ何なのか探求しなければならないが,そうではないということだ. 次に無理数であることを示す.実数だと分かれば,有理数か無理数であるので, 有理数なら分数で表現できるはずだが,そうではないということだ.

 任意の循環しない無限小数を𝛼=𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛とする. 𝑘は整数で,𝑘𝑛09のいずれかの整数である.

 まずこの無限小数が実数であることを示す.

  1. 有理数の切断を準備する.

    以下のように有理数の組𝐴𝐴を定義する.

    𝑎𝑛=𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛=𝑘+𝑘110+𝑘2102++𝑘𝑛10𝑛𝑏𝑛=𝑎𝑛+110𝑛 𝐴={𝑟|なくとも1つの自然数𝑛について𝑟<𝑎𝑛}.𝐴={𝑟|すべての自然数𝑛について𝑎𝑛𝑟}

    ポイントは,𝑎1𝑎2𝑎𝑛𝛼という性質で𝐴を定義していること. 𝐴𝐴の補集合である.

    𝑏𝑛は無理数であることを示すときに使われる.

    この有理数の無限集合の組𝐴,𝐴が証明の方針に従い,無理数であることを示す.

  2. 実数であること.

     定義に従って,まず𝐴,𝐴が実数であることを示す.

     前提として,𝑎1𝐴,𝑏1𝐴なので,𝐴,𝐴は空集合ではない.

     また,𝐴は有理数の切断の条件3’.を満たす. なぜなら,𝑟𝐴のとき,𝑟𝑠,𝑠ならば,𝑛,𝑎𝑛<𝑟𝑠なので,𝑛,𝑎𝑛<𝑠となるから. 難しく書いたがつまり,𝐴の元を適当に𝑟を取って,𝑟𝑠な有理数𝑠はすべて𝐴の元だから, 𝐴は有理数の切断の条件3’.を満たしているということ.

     そして,𝐴に最大の有理数はない. なぜなら,𝐴の定義から𝐴に属する有理数𝑟はある自然数𝑛が存在して, 𝑟<𝑎𝑛𝑎𝑛𝐴なので,かならず大きい有理数がある.

     以上から,𝐴,𝐴は実数である.

  3. 𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛=𝐴,𝐴である.

     𝛼=𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛とおく. 𝐴,𝐴の元が𝛼を境界としていることを示す. すなわち,上で定義した𝐴,𝐴{𝑟|𝑟<𝛼}{𝑟|𝛼𝑟}に等しいことを示す.

     𝑟𝐴を任意でとる.すると,ある自然数𝑁があり,𝑟<𝑎𝑁を満たす. 𝑎𝑛の性質からすべての自然数𝑛において,𝑎𝑛<𝛼だから𝑟<𝑎𝑁<𝛼. よって,𝐴={𝑟|𝑟<𝛼}

     𝑟𝐴を任意でとる.するとすべての自然数nにおいて,𝑎𝑛𝑟.また,𝑎𝑛<𝛼である.𝑟,𝛼を比較すると,𝑟<𝛼はありえない.𝑟<𝛼なら,𝑟𝐴でもあるが,𝐴𝐴=なので,ありえない.よって,𝛼𝑟である. したがって,𝐴={𝑟|𝛼𝑟}

     以上から,𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛=𝛼=𝐴,𝐴

  4. 無理数である.

     𝐴に最小の有理数がないことを示す.

     すべての自然数𝑛において,𝛼<𝑏𝑛,𝑏𝑛𝐴であり,𝑏𝑛+1<𝑏𝑛なので,𝐴に最小の有理数は存在しない.

以上により,循環しない無限小数は無理数であることが示せた.

  • 有理数の切断の定義は何か.
    • 同値な条件は何か.
  • 有理数の切断𝐴,𝐴における,有理数と無理数の違いは何か.