証明の方針として,まず循環しない無限小数が実数であることを示す.
実数でなければ何なのか探求しなければならないが,そうではないということだ.
次に無理数であることを示す.実数だと分かれば,有理数か無理数であるので,
有理数なら分数で表現できるはずだが,そうではないということだ.
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有理数の切断を準備する.
以下のように有理数の組A,A′を定義する.
anbn=k.k1k2⋯kn=k+10k1+102k2+⋯+10nkn=an+10n1
AA′={r∈Q ∣ 少なくとも1つの自然数nについてr<an}.={r∈Q ∣ すべての自然数nについてan≤r}.
ポイントは,a1≤a2≤⋯≤an≤⋯≤αという性質でA′を定義していること.
AはA′の補集合である.
bnは無理数であることを示すときに使われる.
この有理数の無限集合の組⟨A,A′⟩が証明の方針に従い,無理数であることを示す.
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実数であること.
定義に従って,まず⟨A,A′⟩が実数であることを示す.
前提として,a1∈A,b1∈A′なので,A,A′は空集合ではない.
また,A′は有理数の切断の条件3’.を満たす.
なぜなら,r∈A′のとき,r≤s,s∈Qならば,∀n∈N,an<r≤sなので,∀n∈N,an<sとなるから.
難しく書いたがつまり,A′の元を適当にrを取って,r≤sな有理数sはすべてA′の元だから,
A′は有理数の切断の条件3’.を満たしているということ.
そして,Aに最大の有理数はない.
なぜなら,Aの定義からAに属する有理数rはある自然数nが存在して,
r<anでan∈Q∩Aなので,かならず大きい有理数がある.
以上から,⟨A,A′⟩は実数である.
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k.k1k2⋯kn⋯=⟨A,A′⟩である.
α=k.k1k2⋯kn⋯とおく.
A,A′の元がαを境界としていることを示す.
すなわち,上で定義したA,A′が{r∈Q ∣ r<α}と{r∈Q ∣ α≤r}に等しいことを示す.
r∈Aを任意でとる.すると,ある自然数Nがあり,r<aNを満たす.
anの性質からすべての自然数nにおいて,an<αだからr<aN<α.
よって,A={r∈Q ∣ r<α}.
r∈A′を任意でとる.するとすべての自然数nにおいて,an≤r.また,an<αである.r,αを比較すると,r<αはありえない.r<αなら,r∈Aでもあるが,A∩A′=∅なので,ありえない.よって,α≤rである.
したがって,A′={r∈Q ∣ α≤r}.
以上から,k.k1k2⋯kn⋯=α=⟨A,A′⟩.
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無理数である.
A′に最小の有理数がないことを示す.
すべての自然数nにおいて,α<bn,bn∈A′であり,bn+1<bnなので,A′に最小の有理数は存在しない.