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無理数は稠密である.(P16)

定理(無理数の稠密性)

 無理数は数直線上至る所稠密に分布している.

 循環しない無限小数はすべて無理数を表わすことを証明するとすぐにわかるらしい.私にはすぐにわからなかった.有理数が稠密であることは定理1.4でわかるが,無理数も稠密であることがこの定理の主張である.

  1. 稠密の確認

     無理数が稠密であるとは,

    無理数𝛼,𝛽,𝛼<𝛽任意えられたとき,𝛼<𝛾<𝛽なる無理数𝛾無数存在する.

    ということ.

  2. 切断の準備

     𝛼,𝛽は循環しない無限小数である.𝛼=𝑘.𝑘1𝑘2𝑘𝑛,𝛽=𝑠.𝑠1𝑠2𝑠𝑛とおく.また,

    𝑎𝑛=𝑘+𝑘110+𝑘2102++𝑘𝑛10𝑛𝑏𝑛=𝑠+𝑠110+𝑠2102++𝑠𝑛10𝑛

    とする.

    𝐶={𝑟|𝑛;𝑐𝑛=𝑎𝑛+𝑏𝑛2𝑟}

    𝐶𝐶の補集合とすると,𝐶,𝐶は切断である.(循環しない無限小数は無理数を表わすを参照.)

  3. 𝛼<𝛾<𝛽であること.

     𝛾=𝐶,𝐶とするとき,𝛼<𝛾<𝛽であることを示す.すなわち,

    𝐴𝐶,𝐶𝐵

    であることを示す.

     定理1.5より,実数𝛼に対して,𝑎<𝛼𝑎+1𝑚𝑎𝐴,𝑎+1𝑚𝐶なる有理数𝑎と自然数𝑚が存在する.𝑎+1𝑚𝐴𝑎+1𝑚𝐶なので,𝐴𝐶である.𝐶の定義から,明らかに𝐴𝐶なので,合わせると𝐴𝐶となる.

     𝛾𝛽に対しても同様である.よって,𝛼<𝛾<𝛽である.

  4. 𝛾は無理数であること.

     𝐶に最小の有理数がないことを示す.

    𝑑𝑛=𝑐𝑛+110𝑛

    𝛾を考える.すべての自然数𝑛において,𝛾<𝑑𝑛で,𝑑𝑛+1<𝑑𝑛という性質から,𝐶に最小の有理数はない.

  5. 無数に存在すること.

     ここまでで,無理数𝛼,𝛽,𝛼<𝛽に対し,𝛼<𝛾<𝛽なる無理数が存在することがわかった.以下,𝛼<𝛾についても同様に議論をすれば,無理数が無数に存在することがわかる.