定理(無理数の稠密性)
無理数は数直線R上至る所稠密に分布している.
定理の主張
循環しない無限小数はすべて無理数を表わすことを証明するとすぐにわかるらしい.私にはすぐにわからなかった.有理数が稠密であることは定理1.4でわかるが,無理数も稠密であることがこの定理の主張である.
証明の考え方
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稠密の確認
無理数が稠密であるとは,
無理数α,β,α<βが任意で与えられたとき,α<γ<βなる無理数γが無数に存在する.
ということ.
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切断の準備
α,βは循環しない無限小数である.α=k.k1k2⋯kn⋯,β=s.s1s2⋯sn⋯とおく.また,
anbn=k+10k1+102k2+⋯+10nkn=s+10s1+102s2+⋯+10nsn
とする.
C′={r∈Q ∣ ∀n∈N;cn=2an+bn≤r}
CはC′の補集合とすると,⟨C,C′⟩は切断である.(循環しない無限小数は無理数を表わすを参照.)
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α<γ<βであること.
γ=⟨C,C′⟩とするとき,α<γ<βであることを示す.すなわち,
A⫋C,C⫋B
であることを示す.
定理1.5より,実数αに対して,a<α≤a+m1,a∈A,a+m1∈Cなる有理数aと自然数mが存在する.a+m1∈/Aでa+m1∈Cなので,A=Cである.Cの定義から,明らかにA⫅Cなので,合わせるとA⫋Cとなる.
γとβに対しても同様である.よって,α<γ<βである.
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γは無理数であること.
C′に最小の有理数がないことを示す.
dn=cn+10n1
とγを考える.すべての自然数nにおいて,γ<dnで,dn+1<dnという性質から,C′に最小の有理数はない.
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無数に存在すること.
ここまでで,無理数α,β,α<βに対し,α<γ<βなる無理数が存在することがわかった.以下,α<γについても同様に議論をすれば,無理数が無数に存在することがわかる.