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実数の連続性(定理1.6)

定理1.6(実数の連続性)

 𝐵,𝐵が実数の切断のとき,𝐵に属する最大の実数が存在するか,または𝐵に属する最小の実数が存在する.

 本定理の主張は,記事タイトルの通り,実数は連続しているということだ.しかし,定理の字面を真正面に受け取ってもそのようには読めない.いったいどういうことなのか.

 𝐵,𝐵について以下のとおりに整理できる. (max𝐵, min𝐵は最大値,最小値を意味する.)

max𝐵min𝐵
(1)実数の切断の定義より,ありえない.
(2)可能性あり.
(3)可能性あり.
(4)可能性あり.
実数の切断における最大/最小値の可能性を整理.

 本定理は,(2),(3)のいずれかであり,(4)ではないことを主張している.有理数の切断(𝐴,𝐴)と有理数が連続でない(すき間がある)関係を考えるとわかりやすい.

max𝐴min𝐴
(1)‘有理数の切断の定義より,ありえない.
(2)‘有理数の切断の定義より,ありえない.
(3)‘有理数と同値.
(4)‘無理数.有理直線上のすき間.
有理数の切断における最大/最小値の整理.

 有理数の切断を考えた場合,(4)‘はすき間があるということだった. 実数の切断でも同様に考えて,(4)の場合が否定できると,実数にすき間がないことになり, 連続であることが言える

 以下の命題を示せばよい.

実数の連続性

 どんな実数の切断𝑅,𝑅においても,すき間がない. (すなわち,𝑅に最大の実数が存在するか,もしくは𝑅に最小の実数が存在する.)

 背理法により示す.すなわち,

ある実数切断𝑅,𝑅があり,この切断において,𝑅最大実数がなくかつ𝑅最小実数がない

と仮定し,矛盾を示す.(この仮定が成立したらすき間があるということだから.)

  1. すき間付近の実数を構成する.

     𝑅,𝑅に対し, 𝛼=𝐴,𝐴𝐴=𝑅𝐴=𝑅を考える. 𝐴,𝐴が有理数の切断であることを確かめる.なぜなら, 𝐴に最大の有理数が存在するかどうかわかっていないから.

     𝑅,𝑅は空集合ではないので,𝐴,𝐴も空集合ではない. 𝑟𝐴,𝑠𝐴とすると,𝑟𝑅,𝑠𝑅であり, 実数の切断の定義より,𝑟<𝑠. よって,有理数の切断の条件(1)を満たす.

     𝐴に最大の有理数𝑟0が存在したとすると,𝑟0𝑅でもあることと, 背理法の仮定から𝑅に最大の実数がないので,𝑟0<𝜌なる実数𝜌𝑅がある. このとき定理1.4より,𝑟0<𝑟<𝜌なる有理数𝑟が存在する. しかし𝑟0𝐴の最大の有理数であると仮定したので,矛盾する. よって,𝐴は最大の有理数は存在しない.つまり,有理数の切断の条件2.を満たす.

     以上により,𝛼=𝐴,𝐴は有理数の切断(実数)である.

  2. 矛盾を示す.

     𝛼は実数であり, 実数の切断𝑅,𝑅においては𝛼𝑅もしくは𝛼𝑅である.

     𝛼𝑅とする.𝑅に最大の実数はないので, 𝛼<𝜌なる実数𝜌𝑅が存在する. 定理1.4より,𝛼<𝑟<𝜌なる有理数𝑟がある. 𝛼<𝑟なので,𝑟𝐴だが,𝑟<𝜌なので𝑟𝑅, つまり𝑟𝐴のはず.矛盾する.つまり𝛼𝑅

     𝛼𝑅とする.𝑅に最小の実数はないので, 𝜑<𝛼なる実数𝜑𝑅が存在する. 定理1.4より, 𝜑<𝑟<𝛼なる有理数𝑟がある. 𝑟<𝛼なので,𝑟𝐴だが,𝜑<𝑟なので𝑟𝑅, つまり𝑟𝐴のはず.矛盾する. つまり𝛼𝑅

     以上から実数𝛼が実数の切断𝑅,𝑅のどちらにも属さない矛盾が発生した.

 したがって,背理法により実数にはすき間がない(連続である)

  • 実数の切断と有理数の切断は何が違うのだろうか.