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実数が有理数の場合の加法について(P19)

定理

𝛼=𝑎,𝛽=𝑏が有理数のとき,実数としての和𝛼+𝛽と有理数としての和𝑎+𝑏は一致する:

𝛼+𝛽=𝑎+𝑏

 実数の加法については定義した.だが,その実数がともに有理数であった場合,和の切断は自然な表し方ができるということを主張している.すなわち,

𝛼+𝛽={𝑟|𝑟<𝑎+𝑏}

とできる.要するに,有理数であれば,𝑎+𝑏で切断したことと同じということ.

 上記は当たり前のようにみえるが,実数の加法の定義では

𝛼+𝛽={𝑠+𝑡|𝑠𝐴,𝑡𝐵}

(𝛼=𝐴,𝐴,𝛽=𝐵,𝐵)なので,𝑟<𝑎+𝑏とは言えないのである.

 𝑎+𝑏を実数として切断で表わすと,𝑅={𝑟|𝑟<𝑎+𝑏}として,𝑎+𝑏=𝑅,𝑅

 また,𝛼+𝛽=𝑆,𝑆𝑆=𝐴+𝐵={𝑡+𝑢|𝑡𝐴,𝑢𝐵}とおく.

 𝛼+𝛽=𝑎+𝑏を示すには,𝑆=𝑅を示せばよい.

  1. 𝑅𝑆を示す.

    𝑟𝑅とする.𝑟<𝑎+𝑏である.補題1.1より,有理数𝑎,𝑏に対し,𝑟=𝑠+𝑡,𝑠<𝑎,𝑡<𝑏なる有理数𝑠,𝑡が存在する.有理数の切断の条件1.より,𝑠<𝑎,𝑡<𝑏なる有理数𝑠,𝑡𝑠𝐴,𝑡𝐵.よって,𝑟=𝑠+𝑡𝑆なので,𝑅𝑆

  2. 𝑆𝑅を示す.

    𝑠𝑆,𝑠=𝑡+𝑢,𝑡𝐴,𝑢𝐵とする.𝑡<𝑎,𝑢<𝑏なので,𝑡+𝑢<𝑎+𝑏.したがって,𝑠𝑅.つまり,𝑆𝑅

 以上より,𝑆=𝑅を示せた.

  • 実数が等しいとはどういうことか.(参考
  • 実数の和はどのように定義されてるか.