定理
β=bが有理数,α=⟨A,A′⟩が任意の実数のとき,
α+b=⟨A+b,A′+b⟩.
定理の主張
有理数b=⟨B,B′⟩,B={r∈Q ∣ r<b}なので,実数の加法の定義によれば,
α+b=⟨R,R′⟩,R={t+u ∣ t∈A,u∈B}
となる.
この定理の主張は,R=A+b であるということ.もう,{r∈Q ∣ r<α+b}によって切断するのではないのかと思うが,そうではない.
証明の考え方
有理数bを実数とみて,b=⟨B,B′⟩,B={r∈Q ∣ r<b}とおける.このとき,α+b=⟨R,R′⟩,R=A+B={t+u ∣ t∈A,u∈B}となる.
α+b=⟨A+b,A′+b⟩を示すには,R=A+bを示せばよい.
-
R⊂A+bを示す.
r∈R,r=t+u,r∈A,u∈Bとする.u<bだから,t−(b−u)<t.有理数の切断の条件3.より,t−(b−u)∈A.このとき,r=t−(b−u)+bとなるので,r∈A+b.
-
A+b⊂Rを示す.
r+b∈A+b,r∈Aとする.このとき有理数の切断の条件2.よりAには最大の有理数が存在しないことから,r<tなる有理数tが存在する.すると,有理数の切断の条件3.より,b−(t−r)∈Bである.このとき,r+b=t+b−(t−r)∈Rとなるので,A+b⊂R.
以上から,A+b=R.したがって,α+b=⟨A+b,A′+b⟩.
復習ノート
- α+β={r∈Q∣r<α+β}と誤解していないか.