定義
実数α=⟨A,A′⟩において,
−α=⟨−A′,−A⟩, −A′={−r ∣ r∈A′}, −A={−r ∣ r∈A}と定義する.
定理1.8(逆元)
−α+α=α+(−α)=0.
定理の主張
加法に関して,−αはαの逆元であるということ.
証明の考え方
α=aが有理数のときは,有理数の計算なので明らか.
αが無理数の場合を考える.
S={r∈Q ∣ r<0}とおくと,0=⟨S,S′⟩.R=A+(−A′)={r+s ∣ r∈A,s∈−A′}とおくと,α+(−α)=⟨R,R′⟩.
R=Sを示す.
-
R⊂Sを示す.
r+s∈R,r∈A,s∈−A′とする.−s∈A′なので,r<−s.よって,r+s<0.すなわち,r+s∈S.
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S⊂Rを示す.
t∈Sとする.t=r+s,r∈A,s∈−A′なる有理数r,sが存在し,t∈Rとなることを示す.
t<0なので,−t>0である.有理数の稠密性により,m1<−tを満たす自然数mがある.定理1.5より,この自然数mに対し,r<α<r+m1なる有理数rが存在する(αは無理数なので,右側不等式に等号はない.).r<αなので,r∈A.
s=t−rとおく.すると,−s=r−t>r+m1を満たすので,−s>αとなり,−s∈A′.よって,s∈−A′.
以上より,t=r+sを満たす有理数r,sが構成でき,t∈Rとなる.
したがって,R=S.
(−α+α=α+(−α)は交換法則により成立する.)