定理1.9
α≤γ, β≤δ ならば α+β≤γ+δ.
定理1.10
α<γ, β≤δ ならば α+β<γ+δ.
定理の主張
わざわざ言うほどではないが,記載しておく.2つの実数の大小がわかっているものが2組あるとき,それぞれを加算した結果も大小関係が変わらない.等号が成り立つのは,2組ともそれぞれ等しいときに限る.
証明の考え方
定理1.9は定理1.10を含む.定理1.9を証明できれば,定理1.10も証明できる.
定理1.9は以下の4つを示せばよい.そのうち,(2)と(4)は定理1.10にあたる.
- (1)α=γかつβ=δ ならば,α+β=γ+δ.
- (2)α<γかつβ=δならば,α+β<γ+δ.
- (3)α=γかつβ<δならば,α+β<γ+δ.
- (4)α<γかつβ<δならば,α+β<γ+δ.
α=⟨A,A′⟩,β=⟨B,B′⟩,γ=⟨C,C′⟩,δ=⟨D,D′⟩とおく.
α=γ,β=δとする.すると,A=C,B=D.よってA+B=C+D.したがって,α+β=γ+δ.
α<γ,β=δとする.すると,A⊊C,B=D.このとき,A+B⊊C+D.したがって,α+β<γ+δ.
α=γ,β<δのときも同様.
α<γ,β<δとする.すると,A⊊C,B⊊D.このとき,A+B⊊C+D.したがって,α+β<γ+δ.
以上より,定理1.9が成り立つ.同時に定理1.10も成り立つ.
系1,2について
上記定理が証明できたことで,以下がすぐにわかる.いや,まあまあ悩んだ.
系1
不等式α>βはα−β>0と同値である.
系2
不等式α<0は−α>0と同値である.
系1,2の主張
実数においても有理数と同様に,左辺および右辺へ符号を変えて移行できるものと考えてよい.
系1の証明の考え方
α>βと仮定する.−β=−βなので,定理1.10からα−β>β−β=0.よって,α−β>0.
α−β>0と仮定する.β=βなので,定理1.10からα−β+β>0+β=β.よって,α>β.
以上により,α>βとα−β>0は同値.
系2の証明の考え方
α<0と仮定する.−α=−αなので,定理1.10から0=α−α<−α.よって,0<−α.
−α>0と仮定する.α=αなので,定理1.10から−α+α>0+α.よって,0>α.
以上により,α<0と−α>0は同値.
復習ノート
- 定理1.1が4つの条件に関係していることがわかるか.