定理1.12'
収束する数列{αn}の極限は唯一つしかない.
証明の注意点
この定理までの実数の性質において,実数の除法について何もわかっていない.
よって,2εは使えない.つまり,
∣αn−α∣<2εを使えないということ.
よって,∣β−α∣=∣β−αn+αn−α∣<2ε+2ε=ε
という証明ができないということ.
証明
背理法により示す.
数列{αn}が2つの極限α,β,α<βを持つとする.
定理1.4により,α<r<βを満たす
有理数rが存在する.定理1.12により,
有限個を除いてαn<rを満たす.つまり,αn<rを満たすαnが無数にある.
定理1.12は,極限とちょっとでも差があるr−α部分には無数に数列があるということだったから.
また同様に,定理1.12より有限個を除いてr<αnを満たす.
つまり,r<αnを満たすαnが無数にある.
こちらはβ−r部分に無数に数列があるということだ.
以上により,無数のαnについて,αn<r,r<αnを満たすことになる.
矛盾が生じる.
背理法により,極限はただ一つしかない.