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収束する数列の極限はただ一つ.(P24)

定理1.12'

 収束する数列{αn}\{ \alpha_n \}の極限は唯一つしかない.

証明の注意点

 この定理までの実数の性質において,実数の除法について何もわかっていない. よって,ε2\dfrac{\varepsilon}{2}は使えない.つまり, αnα<ε2|\alpha_n - \alpha| < \frac{\varepsilon}{2}を使えないということ. よって,βα=βαn+αnα<ε2+ε2=ε|\beta - \alpha| = |\beta - \alpha_n + \alpha_n - \alpha| < \frac{\varepsilon}{2} + \frac{\varepsilon}{2} = \varepsilon という証明ができないということ.

証明

 背理法により示す.

 数列{αn}\{ \alpha_n \}が2つの極限α,β,α<β\alpha, \beta, \alpha < \betaを持つとする. 定理1.4により,α<r<β\alpha < r < \betaを満たす 有理数rrが存在する.定理1.12により, 有限個を除いてαn<r\alpha_n < rを満たす.つまり,αn<r\alpha_n < rを満たすαn\alpha_nが無数にある. 定理1.12は,極限とちょっとでも差があるrαr - \alpha部分には無数に数列があるということだったから.

 また同様に,定理1.12より有限個を除いてr<αnr < \alpha_nを満たす. つまり,r<αnr < \alpha_nを満たすαn\alpha_nが無数にある. こちらはβr\beta - r部分に無数に数列があるということだ.

 以上により,無数のαn\alpha_nについて,αn<rr<αn\alpha_n < r,r < \alpha_nを満たすことになる. 矛盾が生じる.

 背理法により,極限はただ一つしかない.